弁護士業務に役立つ便利なサービス7選+α

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1. 不動産登記情報の名寄せサービス(登記簿図書館)

相当な時間と費用をかけて裁判で勝訴しても、相手方に強制執行する財産がなければ、判決はただの紙切れです。そのため、相手方の財産の有無や強制執行の可否は、弁護士にとって重大な関心事です。

特に、不動産は価値が高いうえ、現金や預貯金と違って隠匿しにくいため、強制執行の対象として非常に魅力的ですが、これまで、相手方の所有する不動産を調べる有効な方法がありませんでした(改正民事執行法については後述)。

市町村には、誰がどこの不動産を所有しているのかを記載した固定資産課税台帳(名寄帳)が保管されていますが、本人と相続人以外は閲覧不可であり、弁護士会照会も拒絶されます。

私は、不動産の名寄せは不可能だと思っていましたが、個人や法人の所有財産を検索できる、民間の名寄せサービスが登場したことにより状況が一変しました。

本来不可能なはずの名寄せが可能なのは、運営会社が登記の代行取得を長年行っており、これまで取得してきた登記情報をデータベース化し、検索可能な状態にしているからです。

運営会社が過去に取得した登記の内容のみが検索対象となるので、あらゆる不動産を網羅しているわけではありませんが、かなりの分量がヒットします。特に、金融機関の抵当権が付されている不動産は高確率でヒットします。

ちなみに、個人名で検索すると、同姓同名が相当数ヒットするので、しらみつぶしに開示したうえ、住所から相手方か否かを確認する必要があります。

弁護士だけではなく、金融機関やメディア関係者も同サービスを使用しているとのことで、融資の決定や、週刊誌の記事作成の際に使われているそうです。

とにかく革命的なサービスであり、敵方には知られたくないのですが、いずれ広まる情報なので、ここで紹介することにします。検索自体は無料で、詳細な地番を知る際に課金されます。

民事執行法の改正により、不動産に関する情報取得手続が新設されましたが、財産開示手続を経る必要があるうえ、判決等の債務名義がないと使えないため、本サービスの方が使い勝手が良さそうです。

2. ブルーマップ取得サービス(JTNマップ)

不動産仮差押の申立てを行う際に、裁判所にブルーマップを提出しなければなりませんが、以前はブルーマップを取得するのが大変でした。都内の地図であれば弁護士会の図書館で入手できますが、遠方の不動産の場合、地元の法律事務所に取得を依頼することもありました。

ところが今や、ブルーマップもオンラインで取得できる時代になりました。大変素晴らしいサービスですので、知っておいて損はありません。

3. 国会図書館の遠隔複写サービス

私が大学生の頃、地方に住んでいる友人から、「論文を書くのに必要なので、東大の図書館にある○○の本をコピーして送って欲しい。」と頼まれることがありました。マイナーな書籍であればあるほど、地方では入手できないので、せっせとコピーを取って友人に送ったものです。

ところが今や、知り合いに頼らずとも、簡単に書籍のコピーを取得できるようになりました。

国立国会図書館が遠隔複写サービスを提供しており、同サービスを利用することで、国立国会図書館の所蔵資料、すなわち日本国内で出版された出版物について、郵送で複写の依頼を行うことができます。

このサービスの存在を知っておくと、いざという時に役立ちます。特に地方にお住まいの方にお勧めです。

4. 郵便局のWebで郵送できるサービス(Webレター)

今日中に100人の債権者に受任通知を発送しなければならないが、事務局はお盆休みで、事務所にはあなた一人しかいない、そんな状況に追い込まれたとき、あなたならどうしますか。

私だったら、Webレターの利用を検討します。

Webレターとは、WordまたはPDFファイルを郵便局のホームページにアップロードし、差出人・宛先を入力するだけで、文面印刷・宛名印刷・封筒詰め・切手貼り付け・発送・配達までを日本郵便が一括で行ってくれるサービスです。

要は、文面と差出先のデータさえ用意すれば、あとは郵便局が事務作業をやってくれるというものです。

差出先のデータもCSVファイルでアップロードできるので、膨大な量の発送作業が数十分から1時間で終わります。料金も、1通99円(税込)と良心的な価格設定です。

ちなみに私は、弁護士からWebレターで書類を受領したことが一度もありませんので、利用は自己責任でお願いします。

5. 電子内容証明サービスの注意事項

私が敵方の弁護士から受領する内容証明郵便は、ほぼ全てが電子内容証明であり、郵便局で発送するタイプの書面はほとんど見かけなくなりました。日本中の法律事務所で電子内容証明サービスが利用されていると思いますので、詳細な使い方は割愛します。

電子内容証明サービスはシステムの操作性が非常に悪いので、利用時の注意点をまとめます。

(1) 電子内容証明にログインできなくなった場合の対処法

サービスにログインしようとすると、「既にログイン済みです。」と表示され、ログインできないことがあります。

よく見ると赤い文字で、「よくあるご質問・・・を参考にしてください」と表示されるので、そこを見ると、「自動ログアウト期限の30分が経過してから、あらためてログインしてください。」と(ふざけたことが)書いてあります。

私は、急いでいる場合、打ち合わせ中に電子内容証明郵便を発送し、その場で依頼者に控えを渡すのですが、30分も待たされたのでは仕事になりません。

これには非公式の解決方法があり、あるリンクにジャンプすることで強制的にログアウトし、即時に再ログインをすることが可能になります。以下のボタンにそのリンクを紐付けていますので、ログインできなくなった場合はクリックして下さい。

多くの弁護士が、この問題のために不毛な時間を費やされていることと思います。郵便局にはシステムの改善を求めたいところです。

(2) 操作ボタンの色が紛らわしいので注意

電子内容証明郵便を発送するまでに、複数の画面を遷移しますが、次の画面に進むには、灰色で小さく表示された、「次へ進む」のボタンを押さなければなりません。

なぜだかわかりませんが、各ページの下部に、「会員専用ページに戻る」という赤色でデカデカと強調されたボタンが配置されており、送付文書の確認まで終わった段階で、ついこの赤色ボタンを押してしまうことがあります。

このトラップに引っかかると、一から作業をやり直すことになり、本当にストレスが溜まります。急いでいるときでも、必ずボタンの内容を確認するようにしましょう。

紛らわしいボタンを配置しないというのがWebデザインの基本ですが、当面の間、このユーザーインターフェースが改善されることはないと思います。みなさんもお気を付けください。

6. 選択肢が広がった預貯金口座の照会方法

判決という紙切れに命を吹き込むためには、相手方の財産を調査して強制執行を行う必要があります。相手方の預貯金口座を調べる方法として、弁護士会照会と民事執行法に基づく第三者からの情報取得手続があります。

(1) 弁護士会照会

近年、弁護士会照会によって、メガバンク3社とゆうちょ銀行の口座情報が開示されるようになりました。その他の銀行については、インターネットで「弁護士会照会 ○○銀行」と検索すると、弁護士会照会に応じた銀行、応じなかった銀行の情報が出てきます。

弁護士会照会のメリットは秘匿性であり、後述する情報取得手続と違って、通常は相手方への通知が行われません。

デメリットは、開示費用が高額であることと、開示書式や添付書類が煩雑なことです。

(2) 民事執行法に基づく情報取得手続

民事執行法に基づく情報取得手続のメリットは、弁護士会照会に比べて費用が安い点です。申立手数料が1件1000円、第三者の報酬(銀行の手数料)が一件2000円ずつとされています。また、弁護士会照会で回答を拒絶している金融機関についても、情報取得手続では回答に応じると見られます。

デメリットは、第三者からの最後の情報提供書返送後1か月程度経過すると、裁判所から債務者へ情報提供がされた旨を通知が行われる点です。通知が届けば、債務者は開示対象となった預金口座を使わなくなりますので、「相手を油断させておいて、忘れた頃に強制執行」という方法が使いにくくなります。

(3) その他

教科書に書いてある預貯金の開示手続は上記の2つですが、いずれも「債務名義がないと開示手続ができない」という致命的な欠陥があります。債務者は、敗訴判決が下されるまでの間に預貯金を隠匿する可能性が高く、私が判決後に行った弁護士会照会で、めぼしい預貯金が残っていたケースは1件もありません。

訴訟提起前に相手方の預貯金を調査することができれば、債権仮差押を行ったうえで訴訟を提起できるため非常に有効なのですが、残念ながら、そのような開示制度は存在しないことになっています。

「存在しないことになっている」と書いたのは、非公式のルートが存在するからです。

非公式ルートは、弁護士にとって百害あって一利なしですので、絶対に関与すべきではありませんが、相手方がこれを使って預金を押さえてくる可能性がありますので、頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。ちなみに、非公式ルートを使っても、○色の銀行、○○ト系と〇〇口座は開示されないそうです。

7. 早くて安い、登記事項証明書のオンライン申請

法律事務所では、不動産や会社の登記事項証明書を日常的に取得します。以前は、窓口か郵送での申請しかできなかったため、申請書に収入印紙を貼り、返信用封筒を同封して法務局に送付していたのですが、オンライン申請制度の登場により手続が簡単になりました。

オンライン申請を利用した場合、郵送の場合600円かかる手数料が500円で済むほか、郵送申請よりも若干早く証明書が到着します。手数料を納付する際に振込手数料が発生するため、野村信託銀行の振込手数料無料サービスを利用すると便利です。

野村信託銀行口座については、以下の記事で紹介しています。

参考記事:弁護士口座と預り金口口座は早めに準備(振込先を後から変更するのは大変)

8.[番外編]コメ兵の買い取りサービス(地域限定)

弁護士は、不動産、車や貴金属を売却する機会があります。

時計などの貴金属を売却する際は、誰もが知っている有名な買取店を回って査定額を聞いて周り、一番高値の店舗で売却します。コメ兵は結構良い値段を付けてくれるので、大黒屋と一緒に回ることが多いです。

以前、非常に高額な腕時計を売却する機会があり、査定額が一番高かったコメ兵に売却したのですが、売却後、コメ兵が東弁協特約店であることを知り愕然としました。特約店の優待を使えば、買取価格を更に数万円上乗せすることができたからです。

東京の弁護士の方は、コメ兵に行く前に東弁協特約店ガイドブックを確認されることをお勧めします。売却する物の金額が高いので、買取金額が数パーセント変わるだけでも数万円違ってきます。

ちなみに、高額な貴金属の査定を依頼する際は、目印となるような黄色の糸を貴金属に巻き付けたうえ、「必ず私の目が届くところで査定してください」と依頼しています。トラブル防止のためです。

参考リンク:コメ兵(外部リンク)

9.[番外編]ビザスクのスポットコンサル

最後に、私が注目しているサービスを紹介します。

多くの訴訟は事実認定が勝敗を決しますが、訴訟の内容によっては、高度な専門的知識や、業界の実務慣行に対する理解が必要になってきます。商取引であれば、依頼者が相応の知見を持っていることがほとんどですが、依頼者も弁護士も知識がなくてお手上げというケースも少なくありません。

そうした場合に、専門家や実務家の協力を求めることがありますが、これがまた、地味で骨が折れる作業です。知らない人に電話してアポイントを取り、遠くの大学や研究機関まで話を聞きに行き、帰ったらお礼状を書いたりお礼の品を贈ったりと、結構な時間と労力を要します。

ここで登場するのが、タイトルに掲げたビザスクのスポットコンサルです。

ビザスクのスポットコンサルは、様々な分野の専門家や実務家が登録されており、そうした人達に有償で相談ができるようになっています。弁護士にとってのメリットは、面倒な作業をお金で解決できる点と、人づてではたどり着かない、発掘困難な人材を探し出せる点です。

弁護士にとって特にニーズがあるのは、「特定の業界に長く身を置き、業界慣行を知悉している人」ではないかと思います。

例えば、依頼者が訴状が届いたと言って相談にきて、内容を聞くと、確かに依頼者の業務は法令に違反しているし、契約書を見ても勝ち目がない。ところが、そうしたときに業界の人に話を聞くと、「この業界にいる人は、頼む方も頼まれる方も、みんなグレーだとわかりながらやってるんだよ。」と言ってくれたりするわけです。そうなると、原告にも過失があるわけですから、少し景色が変わってきます。

また、このサービスは、法的紛争以外でも活用できると見ています。

例えば、どこにも雛形が存在しないような、マイナーな契約書を作れと言われた場合、実務を知っている人にヒアリングをして、考えられるリスクを条項に落とし込んでいくのが王道ではないかと思います。

法律事務所には、予想もしないような様々な相談が舞い込んでくるため、このような「人探し・マッチングサービス」の存在を知っておくと、役立つことがあるかもしれません。

参考リンク:ビザスク|日本最大級のスポットコンサル(外部リンク)