弁護士業務に携わっていると、不合理な制度や非効率なルールを数多く目にします。共感してくださる方がいらっしゃれば嬉しく思います。
1. 切手の金種がおかしくないか?
例えば、84円の定形郵便を「速達」で送る場合、84円切手と290円切手の「計2枚」の切手を貼る必要があります。
同様に、84円の定形郵便を「簡易書留」で送る場合、84円切手と320円切手の「計2枚」の切手を貼る必要があります。
上記の2種類の郵便は、日本中で膨大な量の郵便が行き交っているはずですが、なぜ1枚の切手で済む374円切手や404円切手がないのか不思議でなりません。
郵便局は、どの切手額の郵便物が多いのか、詳細なデータを持っているはずであり、利用が多い切手額については、1枚の切手で済むような切手を販売すべきです。
冒頭の例は切手が2枚の場合ですが、3枚、4枚と切手を貼らなければならないことも珍しくありません。
切手が1枚で済むか、4枚貼らないといけないかということは、封筒一つでは大したことはありませんが、送る数量が増えるほど負担が増します。そして、こうした無駄な労力は、日本中の事業所で発生しているのです。
郵便局は、コストを理由に販売枚数が少ない金種を廃止していますが、毎年高額なコストをかけて記念切手を発行していることと矛盾します。ビジネスの世界に記念切手は不要であり、記念切手にかける費用があるのであれば、実用性の向上に予算を割いて欲しいと思います。
2. 証拠のホッチキス留めは必要か?
裁判資料をスキャンし、PDFとして保存している弁護士は非常に多く、今後、ますます増えていきます。
今、現場で何が起きているかというと、原告が、甲第1号証から甲第20号証までの証拠資料をせっせとホッチキスで留めて被告に渡し、被告は、それらのホッチキスをせっせと外してスキャナーにかけているわけです。
裁判所は二穴ファイルで記録を綴じるため、ホッチキスの有無に影響を受けないはずであり、ホッチキス留めは、原告と被告に無駄な労力を課すだけです。
私は、証拠書類を号証ごとにホッチキスで留めるのではなく、複数の号証をまとめて紐で綴じる方が合理的だと考えています。
乱丁や落丁のリスクは、号証ごとに綴じた場合と同様ですし、各号証の提出確認に要する労力は、ファックス送信の場合と同様であって、許容性も認められると思います。
この問題は、いずれは民事裁判手続のIT化により解消すると思いますが、完全にオンライン化するのはまだ先の話です。
裁判所には、「複数の号証をまとめて綴じても良い」と公式にアナウンスして頂きたいと思います。裁判所のアナウンスがないと、弁護士は周囲の様子を窺って従前の方法を採り続けます
3. 正本と副本はなぜ別々に送信しなければならないのか?
準備書面の正本と副本をファックスで送信する場合、裁判所には正本用の送信書を作成して正本を送信し、相手方には副本用の送信書を作成して副本を送信しますが、これらを分けて送信する実益はあるのでしょうか。
正本と副本は、書面の内容は同一で、違いがあるとすれば、正本には「正本」「副本直送」のスタンプが、副本には「副本」のスタンプが押してある点だけです。
書面の内容は同一なので、一枚の送信書で、裁判所と相手方に同時送信した方が明らかに効率的です。
「正本」「副本」等のスタンプがなくとも、裁判所に届いた書面が正本で、相手方に届いた書面が副本であり、副本が直送されたことは送信書(受領書)から明らかです。
準備書面をファックスで送信した場合、送信後の書面はゴミになります(理由もなくクリーンコピーを提出すると書記官に嫌がられます。)。
同時送信したら10枚で済むはずのゴミが、正本と副本を別々に作成すると20枚になります(各書面の表紙のみを差し替える方法もありますが、書面の種類が多いと手違いが生じるため、私は全ページを2部印刷します。)。
このように、効率性、経済性、環境に対する配慮のいずれの側面から見ても、現在の運用は好ましくなく、必要であれば規則を変更するなどして、正本と副本の同時送信を認めてもらいたいものです。
4. 終わりに
上記のほかにも、不合理な制度が数多くありますが、細かすぎるので割愛します(「送信書の送信者欄に押印する実益はあるのか」「期日請書の運用方法は合理化できるのではないか」等)。
小さな無駄も、積もれば山となります。無駄な作業が削減された結果、事務員が一人減るのであれば、事務所の収益に直結します。また、事務員を置かずに一人で事務所を切り盛りされる方にとって、事務作業が減ることで、本業に専念できるようになります。
不合理、非効率なルールについては、議論を重ねて改善していきたいものです。