私が使用している、こだわりの文房具をご紹介します。
1. ボールペン|ジェットストリーム4&1
司法試験は手書きの筆記試験があるので、筆記用具について一家言持っている弁護士が多いです。
ボールペンは好みで選べば良いと思いますが、手足の延長として無意識で使いこなす物なので、一つの種類に統一した方が楽です。
私は三菱鉛筆のジェットストリーム4&1を愛用していますが、このボールペンを手に取ると、特に何も考えなくても、黒の芯を出したいときは黒を、赤の芯を出したいときは赤を出しています。
書きたい時にボールペンがないと不便なので、机の上には常にジェットストリームが7、8本あり、自宅でも、ペンを使いそうな所には1、2本置いています。
ジェットストリーム4&1のメリットは、書き心地が良く、長時間使っても疲れにくい点ですが、最大のデメリットは、高級感がなく安っぽい点です(気負わず使えるという点ではメリットかもしれませんが。)。
法律事務所では、依頼者に書類を記入してもらう機会がよくありますが、弁護士報酬は安くないですし、高級感のある、洒落たペンを使いたいというニーズもあります。
モンブランのペンにジェットストリームの芯を入れたり、試行錯誤を繰り返しましたが、依頼者に何かを書いてもらうときのペンは、ジェットストリームプライムに落ち着きました。ジェットストリームの書き心地を維持しながら、デザインと質感は高級ボールペンです。
お勧めのカラーは、ダークネイビーとブライトブルーです。ブラックとホワイトも買いましたが、質感が安っぽいので使っていません。
2. メモ用紙|オキナのプロジェクトペーパー
打ち合わせの際に手書きでメモを取る人と、パソコンを使用する人がいます。弁護士によってスタイルが異なると思いますが、私は手書き派です。
メモ用紙は、いろいろと使い比べてみましたが、オキナのプロジェクトペーパーが一番使いやすいです。薄い方眼目が入っており、文字と図表のどちらも書きやすくうえ、紙質が良いのでさらさらと書けます。相手方の弁護士が使っていることも多く、人気商品なのだと思います。
私がリーガルパッドを使わない理由や、メモ用紙の片面しか使わない理由については、別のページで説明します。
3. ホッチキス外し|棒形とペンチ型の使い分け
私は、事件終結時に全ての資料をデータ化しますが、ホッチキスを見逃したままスキャンをすると、スキャンの効率が著しく落ちるため、普段から不要なホッチキスを小まめに外しています。
ホッチキスを外す際は、ホッチキス外しを使用するのが効率的です。ホッチキス外しは棒形とペンチ型の2種類があり、それぞれに長所と短所があります。
棒形は、外した針が内部に回収されるので、机の上が散らかりませんが、登記簿謄本等の長めの針を外すと芯詰まりが発生します。また、紙の端の方でホッチキスが止めてある場合、紙を破くことがあります。
一方ペンチ型は、ゴミの処理が面倒ですが、長めの針でも紙を破らずに外すことができます。
私は、基本的に棒形を利用し、長めの芯を外す場合や、紙の端に芯が打ってある場合はペンチ型を使っています。
4. レーザー距離計|Bosch GLM150C
レーザー距離計とは、レーザーによって2点間の距離を測る道具で、巻き尺と比べると非常に早く、また簡単に距離を測定することができます。
デスクワーク中心の方には全く役に立ちませんが、現場に足を運ぶことが好きな方にとっては非常に便利な道具です。
交通事故や刑事事件など、客観的な証拠が限られている事件では、現場の位置関係が非常に重要になってきますが、知りたい距離が実況見分調書に書かれていなかったり、そもそも実況見分調書が作成されていなかったりします。そうした際は、現場に赴いて距離を測定する必要がありますが、車の合間を縫って巻き尺で距離を測定するのは非常に大変ですし、しゃがんで距離を確認していたら、すぐ後ろに車が来ていてヒヤリとすることがあります。
私は、以前は20メートルの巻き尺で距離を測定していましたが、最近は、レーザー距離計を併用するようになりました。レーザー距離計は、巻き尺に比べてスピーディーに測定でき、一人でも測定が可能です。具体的な距離を把握していると、準備書面の説得力が増しますし、依頼者も、「弁護士が現場に足を運んでくれ、できる限りのことをやってくれた」と満足してくれることが多いように思います。
レーザー距離計はピンからキリまでありますが、デジタルファインダーを備えた機種でなければ、屋外で正確な測定が行えません。私は、ボッシュのレーザー距離計GLM150Cを使用していますが、距離だけではなく、坂道の傾斜も測れるので重宝しています。
測定状況の写真を証拠として提出するのであれば、別売の三脚もあった方が便利です。
5. ライトパネル|FUJICOLOR LEDビュアープロ
積水ハウスが63億円を騙し取られた詐欺事件が世間を驚かせました。これは、犯人の女が、偽造の印鑑登録証明書と偽造パスポートで所有権者を装い、売買代金63億円を騙し取ったという事件です。
印刷技術が非常に進んでいることから、私は当初、積水ハウス側の司法書士が印鑑証明書の偽造を見抜けなかったのもやむを得ないと考えていましたが、続報を聞いて、人ごとには思えなくなりました。
犯人グループは、積水ハウスの前に、いくつかの会社に同一不動産の購入を持ちかけていたのですが、そのうちの一社は、印鑑証明書の印影に疑念を抱き、法務局に照会のうえ、印鑑証明書が偽造であることを見抜いていたのです。
そうなると、積水ハウス側の司法書士は、印鑑照合を行っていたのに、なぜ偽造を見抜けなかったのかという点が問題になってきます。
この事件では、司法書士の責任は全く問題になっていませんが、弁護士も業務で印鑑照合を行いますので、対岸の火事とは言えません。実のところ、弁護士が行う印鑑照合は非常に杜撰で、印鑑証明書が添付されていれば、印鑑照合をしないケースも見受けられます。杜撰な印鑑照合を行って、万一依頼者に損害が発生したら、巨額の損害賠償を請求されかねません。
印影照合の方法はいろいろありますが、ライトパネルを使う方法が一般的です。ライトパネルの上に、印鑑証明書と委任状(契約書)を重ね合わせ、印影が一致するか確認します。
ライトパネルは日常業務だけではなく、訴訟事件で活躍することもあります。例えば、相手方が証拠として提出してきた契約書の印影が、実印によるものか疑念を抱いた場合などです。契約書の偽造に気が付いて、逆転勝訴したという伝説的な逸話もあります。
私はCABINのCL-5000Pを使用してきましたが、製造中止になってしまったので、フジカラーのLEDビュアープロに乗り換えました。
使用する機会はほとんどありませんが、持っていると安心です。
6. スマートフォン用ケーブル
スマートフォンの普及に伴い、相手方との会話を録音してくる依頼者が増えました。
問題は、依頼者のスマートフォンに入っている録音データを、どのようにして受け取るかです。
音声データを受け取る最も簡単な方法は、スマートフォンのケーブルを使って、事務所のパソコンにデータを転送することですが、相談時にケーブルを持参する人は少数派です。
依頼者が機械に強い若者であれば、「無料のオンラインストレージを使って送信せよ」「データを一旦パソコンに取り込んで、USBメモリに入れて事務所に送れ」等の指示ができますが、高齢の依頼者にはハードルが高すぎます。また、複数の録音があると容量が大きくなるので、データを転送する際の通信料についても配慮しなければなりません。
こうした問題を解決する最善の方法は、事務所に各種の充電ケーブルを用意しておくことです。
スマートフォンの主な接続規格は、MicroUSB、Lightning、Type-Cの3種類ですが、最近は、1本で3種類の機能を兼ね備えた便利なケーブルが発売されています。このケーブルでスマートフォンとパソコンをつなぎ、暗証番号を入力すると、スマートフォンのデータをパソコンに移動できるようになります(iPhoneの場合は、パソコンにiTunesをインストールしておく必要があります。)。
高い物ではないので、事務所に一本あると便利です。
ちなみに、このような多機能ケーブルの中には、充電のみが可能で、データ通信ができないものが混在しているので、購入の際は注意が必要です。
参考リンク:3in1 ライトニングケーブル(外部リンク)
7. 各種ゴム印|シャチハタ
何度も書く内容は、スタンプを作成して時間を節約します。
スタンプは、インクを付けてから押す昔ながらのタイプがありますが、毎回インクを付けるのが煩瑣なうえ、汚れやすく、置く場所にも気を遣います。このようなスタンプを使い続けるのは非常に効率が悪いので、私の事務所では、全てのスタンプをシャチハタに置換しました。
シャチハタは、毎回インクを付ける必要がなく、机の上に転がしていても周囲が汚れませんし、持ち運びも簡単です。シャチハタはオーダーメイドで作成しますが、サイズ選びで迷うと思うので、参考までに私のシャチハタのサイズを記載します。
(1) 事務所スタンプ
①住所・電話番号・事務所名・弁護士名
- 大:シャチハタ 角型印2060号(印面サイズ:20×60mm)
- 小:シャチハタ 角型印1850号(印面サイズ:18×50mm)
②弁護士名
- シャチハタ 一行印0860号(印面サイズ:8×60mm)
③登録番号
- シャチハタ 氏名印(印面サイズ:5×29mm)
スタンプは基本的に事務所で使いますが、契約の際は必ず持参します。例えば不動産売買契約の際は、契約書、重説、反社誓約書、精算書や領収書等、記名押印の連続ですので、スタンプを忘れると記入が大変です。
(2) 準備書面スタンプ
①「正本」「副本」「副本直送」
- シャチハタ ビジネスA型(印面サイズ:13×27mm)
これらのスタンプを購入する際は、事務局と自分のスタンプを同じ書体・型式で作成する必要があります。事務局と自分のスタンプが異なると、書面によってスタンプが異なり、統一感がありません。
②「甲第 号証」「乙第 号証」
- シャチハタ ビジネスB型(印面サイズ:13×42mm)
私は、書証をPDFで作成するので、普段の業務でこれらを使用することはありませんが、スタンプの必要性がなくなったわけではありません。このスタンプが活躍するのは、原本照合の場面です。付箋に号証のスタンプを押し、原本に貼り付けます。
(3) 依頼者用スタンプ
「ご捺印ください(実印・認印可)」
「ご署名ください 」
- シャチハタ 一行印0860号(印面サイズ:8×60mm)
(対応する付箋は、ポストイット75×14mm、560SS-NE)
これらのスタンプは、付箋に押し、依頼者に郵送する書類に貼り付けます。
弁護士業務では、依頼者に郵送で署名押印を依頼することがよくありますが、書類に不備があると手続が滞るため、的確に指示をする必要があります。似たような市販品も売られていますが、すぐに使い果たしてしまいますので、スタンプの方が経済的です。
(4) その他のスタンプ
「削除 字」/「加入 字」
- シャチハタ 科目印(印面サイズ:4×21mm)
「依頼者保管用」/「事務所返送用」
- シャチハタ 氏名印(印面サイズ:5×29mm)
裁判手続のIT化に伴い、スタンプのニーズも変わってくると思います。「原本と相違ありません」「コピー拡大」「コピー縮小」といった内容であれば、PDFファイルに直接記入すれば済むため、スタンプは不要になると思います。
一方、「訴訟手続の代理業務」「請求訴訟提起準備のため(当事者の特定及び所在確認)」といった職務上請求に関するものは、しばらくの間ニーズがあると思います(職務上請求が電子化の恩恵を受けるか不明なため。)。
スタンプについては、事務所によって必要とする内容が異なってくるため、各自工夫してみてください。
8. 終わりに
弁護士の元には様々な事件が舞い込んできます。事案に応じて必要なツールを探し出し、それを使いこなすことも、弁護士に求められる能力の一つだと思います。道具を知っているかどうかで勝敗が分かれることもありますので、普段からアンテナを高くしておくことが必要です。
最後に私の経験談を一つ。
刑事告発の依頼を受け、依頼者が持ってきた資料を何の気なしに触っていたのですが、警察署に行ったところ、犯人の指紋を採るので資料を置いていくように言われ、しかも、資料を触ったということで私の指紋まで採られました。
この件の教訓を踏まえ、今は、指紋を付けないための手袋を事務所に常備しています。