1. はじめに
私は、他の事務所の弁護士と一緒に仕事をすることがありますが、「もうこの人とは仕事をしたくない」と思うことがあります。
この記事では、私が一緒に仕事をしたくない弁護士について説明します。
2. 一緒に仕事をしたくない弁護士
(1) Microsoft Wordを持っていない
著名なカメラマンが、「フラッグシップ機を持たないカメラマンとは一緒に仕事ができない。」と話していました。
フラッグシップ機とは、カメラメーカーがプロ用に製造する最上位機種で、一台70万円前後しますが、「プロとしての自覚があるのであれば、ローンを組んででも買え」というのがその方の持論です。
弁護士業界でも似たようなことが言えますが、その道具は、カメラのように高額ではありません。弁護士が最低限持っておかなければならない道具は、Microsoft Wordです。
かつては一太郎がメジャーだった時代もありましたが、今や、裁判所の書記官からも「データはWordで送ってください」と言われる時代であり、各種書式や雛形のほとんどがWordで配付されています。これは逆らえない時代の流れです。
さて、私が一番困るのは、Wordを持っていない若手弁護士が、オープンオフィス(Microsoftと互換性があると言われている、無料のソフトウェア)を使用することです。
オープンオフィスを使われる方は、気が付いていないのかもしれませんが、Wordで作成した文書をオープンオフィスで編集すると、レイアウトが崩れることがあります。
たかがレイアウトと思うかもしれませんが、実際に起きた事故を紹介します。
私がWordで作成した書面が以下の①で、若手弁護士Xがオープンオフィスで編集後に返送してきた書面が以下の②です。違いがわかりますでしょうか。
<①私が弁護士Xに送ったドラフト>
<②弁護士Xから返送されてきたドラフト>
<正解>オープンオフィスで編集後に変更されていたのは、以下の赤丸の部分です。
私は、当事者欄に変更が加えられているとは夢にも思わず、返送されてきた訴状をそのまま裁判所に提出したのですが、後日、当事者の氏名を見て目を疑いました。訴状の1枚目、しかも相手方の氏名の部分です。痛恨のミスでした。
見落とした私の責任はさておき、オープンオフィスを使っている人と仕事をすると、こうした事故が生じやすくなります。
私は、依頼者がオープンオフィスしか持っていない場合は、仕方がないと思って対応しますし、内容によっては、WordとPDFの両方を送るなどの配慮をしますが、弁護士はプロですから、Wordくらい買って欲しいというのが本音です。
(2) Wordの禁じ手を使ってくる
一緒に仕事をしたくない弁護士の2番目は、Wordの禁じ手を使ってくる弁護士です。Wordの禁じ手とは、私が勝手に名付けたもので、以下のような記載方法を指します。
ア 手動改行
Wordは、指定の文字数で自動的に改行されるのですが、まれに、段落の途中で文を改行する人がいます。以下のような書き方です。
通常は、文の途中で改行することはないので、改行マークが付くのは段落の最後のみです。
手動改行の問題点は、「1段落でまとめたけど、やっぱり2段落に分けよう」と思って2段落に分けた際に、必ず変な空白が生じる点です(以下の点線で囲った部分)。
書面を作成して何度も見直した後、提出の直前に段落を分けることがありますが、そうした場合に、空白に気が付かずに書面を提出してしまうことがあります。無意味な手動改行は本当にやめてほしいです。
イ インデントではなく空白文字で字下げを行う
スペースキーで段落の字下げをする方が多いと思います。通常は、Wordの仕様によって、スペースキーを押すと自動的にインデント設定による字下げになるのですが、どうしたことか、インデントではなく空白文字で字下げをする人がいます(以下の赤い四角印の部分です。)。
これをやると、編集の過程で前の段落とつなげた場合に、段落の途中に必ず空白が生じます。
これも結構見落としやすく、気付かずに書面を提出することがあります。インデントではなく空白文字を使用すると、このような事故が多発するのでお勧めしません。
(3) まとめ
書面は内容が大切であり、書式や表記は副次的な要素に過ぎませんが、それでも、実害が発生するような記載方法は望ましくありません。
裁判所に提出する書面は、弁護士にとっては作品であり、相弁護士の不注意によってクオリティーを下げられると本当に腹が立ちます。
ちなみに、上述した内容は、ミスをした本人には伝えていません。自分のイソ弁だったら当然注意しますが、他の事務所の弁護士に言ったところで、プライドを傷付けて波風が立つだけです。
何も言わないけど、次は一緒に仕事をしない、そういう厳しい世界です。